

京都伝統工芸大学校 木工芸専攻卒業後、土屋木工所を経て2021年まつもと木工所開業。
2018年 木のクラフトコンペ「三段傾斜箱 大」大賞受賞。
寄木と傾斜のある難易度の高い指物細工を得意とし、多面体の器や寄木のアクセサリーなどを製作。独自の技術を活かしたフォルムながら、身近に使えるものづくりをしています。
小田原市江之浦 まつもと木工所
松本 育

「手挽きの良さは、機械の刃が入らない所まで刃を当てられること。ツルツルとしたぬくもりのある仕上がりを目指しています」と白鳥さんは語ります。
機械加工では均一な形は作れても、微妙な曲面の調整や、手が触れるたびに馴染んでいくような滑らかな仕上がりは生み出せない。そのぬくもりを生み出すために、白鳥さんは道具を自分で揃え、刃を自ら打つところから始めます。
師匠の「刃物も自分で作れ」という教えの下、同じものを作ったつもりでも違う道具になってしまう難しさと向き合いながら、1mm以下の単位で細かく調整を重ねていきます。
修業時代、お父様は手取り足取り教えてくれることはなく、見て覚える日々だったそうです。
「怒られはしないけれど教えてもくれない環境だったからこそ、自分で考え抜いたことで、教えてもらうよりも早くできるようになったと思う」と振り返ります。
肩たたきの柄をひたすら挽いた修業時代は削る木よりも削りかすを見て調整する日々。現在でも本当に満足できる仕上がりのものは「50個に1個あるかどうか」という厳しい目で、自身の仕事を見つめています。

木の種類によって、刃のあて方や聞こえる音は大きく変わります。
水木やホウ、カツラといった軽い木材はサクサクとした音が鳴り、慎重に刃をあてる必要があります。一方、桜のように脂分や粘りがある木材では、刃を押し込むような感覚で削っていくと言います。
ほかにも柿や屋久杉、ケヤキなど、さまざまな木材の特徴を捉え、その木に最適な形を引き出していきます。希少な木材を扱う際は、失敗できないという静かな緊張感があるそうです。

手神の「五色けん玉」は、白鳥さんの手挽きと、小林じゅんのさんによる寄木が組み合わさって生まれた作品です。
けん玉の本体部分を白鳥さんが手挽きで仕上げ、玉を彩る寄木はじゅんのさんが担当し、白鳥さんが球体へと形づくります。
異なる専門を持つ職人同士が意見を交わしながら進める、白鳥さんにとって初めてのコラボレーションとなりました。他の職人たちとの共創は大きな刺激となり、自身の成長やインスピレーションに繋がったと言います。
デザインのポイントの一つは「さおと玉の隙間をあけないこと」。
取り外しができる構造でありながら、外から仕組みが見えないように工夫されています。隙間なく収まることで美しい外観と、手に持った時の一体感が生まれるけん玉本来の使い心地とを両立しています。曲線や仕上げの質感は手作業ならではの上品な仕上がりを目指しました。シンプルに見えて機械で作るのが難しい形です。また、寄木の仕上がりの紋様がどのようになるか、想像がつかない楽しさがあったと語ります。

これまで、アンティーク時計の修復やテーブルの脚など、難易度の高い仕事も「めんどくさいと言うと終わってしまうから」と前向きに引き受けてきた白鳥さん。実直に技術を磨き求められるものを作ってきた一方で、これからの展望については「自分が作りたいものを、自由に作ってみたい」という想いを膨らませています。
「個展を開き、いろんなコップを作って並べてみたい。その木材に相応しい器を作りたいんです」。これまで「同じものを精緻に同じように作る」仕事を続けてきたからこそ、終わりがない自由なものづくりへの欲求が湧き上がっているようです。
仏具を作る時も、器を作る時も、根底にある想いは変わらない。使い手にとって使いやすく、質の良いものをなるべく手頃な価格で届けたい。「あ、これは白鳥さんが作ったものだ」と気づいてもらえたら嬉しいと、控えめに語ります。
手挽きだからこそ表現できる木本来のぬくもり、そして職人同士の共創から生まれた「五色けん玉」を、ぜひ手に取ってその仕上がりを確かめてみてください。